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ユーザー・インタビュー #1
アオイスタジオ
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● 日本の映画製作を支えるポストプロダクション・スタジオ
System 5は、音楽制作からMA、そしてフィルム・ポストプロダクションといった様々な現場/作業に対応する業務用のフル・デジタル・コンソールです。サーフェースや入出力ユニット、DSPコア、そしてセンター・コンピューターなどがすべてモジュール化されているのが大きな特徴で、各コンポーネントは“EuCon”と呼ばれるAVID独自のプロトコルによって接続されます(物理的なインターフェースは汎用のEthernetと同じです)。このフレキシブルなモジュラー設計により、小規模なシステムから映画のダビング・ステージ用の大規模なシステムまで、様々なシステムを構築できる仕様になっています。リリースは2000年のことで、この種のデジタル・コンソールとしてはかなり古い部類に入りますが、今もなお世界中の第一線の現場で活躍しており、現在もオーダーが止むことはありません。このことからも、System 5の設計がいかに優れ、先進性に長けていたが分かるでしょう。
そして、日本でSystem 5が最も稼働している現場が、東京・麻布十番にあるポストプロダクション・スタジオ「アオイスタジオ」です。アオイスタジオは、映画の録音/ミックスを数多く手がけている会社で、古くは市川崑監督の『東京オリンピック』(1965年)、最近では北野武監督の作品をすべて手がけています。日本で上映される映画の予告編に関しては、邦画/洋画を問わず、その多くがアオイスタジオでミックスされているとも言われ、まさに日本の映画製作の現場を代表するポストプロダクション・スタジオと言えます。
2000年、日本で第一号機となるSystem 5を導入した同社は、その後も続々と追加導入。今年2月には、5式目となるSystem 5を、同社の音響スタジオの中では一番大きなStudio 4に導入しました。ここでは、同社のスタジオ技術部長の松島洋之氏と、サウンドミキサーの久連石由文氏と藤林繁の3氏のインタビューを紹介することにしましょう。
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● 2000年、日本第一号機となるSystem 5を導入
――― 現在、このビルでは音響スタジオは何部屋稼働しているのですか?
松島 7部屋ですね。このビルに移転してきたのが東京オリンピックの年ですから1964年のことで、その時点で6部屋音響スタジオを開設しました。その後間もなく2部屋増設して、計8部屋の体制で長年やってきたのですが、2008年に2つの部屋を併合して1つのスタジオにしたので、いまは7部屋ですね。一番大きな部屋がダビング・ステージのStudio 4で、MA/アフレコ用のStudio 1、MA/フィルム・ミックス用のStudio 2/Studio 3/Studio 6、そして主にCMとテレビ番組のMA用のStudio 7/Studio 8という内訳になっています。
久連石 Studio 1は元々は音楽の収録用に使っていたスタジオで、広いブースがあるので最近はアフレコ用に使っています。
松島 あれくらいの広さがあると、かなりの人数入れますし、声優さんがどんなにがなっても音が飽和することがないんですよ。たぶん20人くらいの声優さんが同時に入れる広さがあると思います。
――― 各スタジオの機材はどのような感じですか?
松島 コンソールは、CMの仕事がメインのStudio 7とStudio 8を除いて、System 5が入っています。2000年に日本での第一号機をStudio 3に導入して、その後Studio 2、Studio 6、Studio 1の順で導入していきました。そして2月にはStudio 4にも導入したので、現在計5式のSystem 5が稼働しています。コンソールに関しては、沖電気の真空管式のものから始まって(笑)、Quad Eightや三菱 Wester、その後はSSLのSL 8000とSL 4000を長いこと使用していましたね。ですからSystem 5が最初に導入したデジタル・コンソールです。
――― まだ実績のないSystem 5をいち早く導入されたのはなぜですか?
松島 そろそろデジタル・コンソールに更新しようかということで、皆で各社に見に行きました。それで実際に触らせてもらったりしたんですが、System 5のサーフェースが一番良く出来ていたんですよね。実はそのとき、System 5は実機がまだ届いてなくて、モックしか触れなかったんですが、それでも感心するくらい良く出来ていた。もっと言うと、バランスというか落としどころが絶妙だったんですよ。個人的に、デジタルなんだからアナログと同じ数の操作子がある必要はないだろうと思っていたんですが、その辺りのバランスが凄く良かった。頻繁に操作するものは専用の操作子として常に表に出ていますし、そんなに使わない操作子は省かれていて。これは素晴らしいと思いましたね。
久連石 僕も一緒に行って触らせてもらって、まず良いなと思ったのが操作性でしたね。 それで実際に納入されて、凄く気に入ったのがEQやコンプレッサーが最初からアサインされているところ。他のフィルム用のデジタル・コンソールの中には、なるべくDSPリソースを消費しないように、必要なチャンネルにだけいちいちアサインする仕様になっているものもあるんですよ。それこそDAWのミキサーのように。しかしSystem 5は、アナログ・コンソールのようにEQやコンプレッサーがすべてのチャンネルに立ち上がっているんです。これは凄く良いなと思いました。アシスタントにいちいち「そのチャンネルにEQを立ち上げてくれる?」とお願いしなくていいわけですから。
松島 そういう「フル・アサイナブル」って、デジタルの利点でもあり面倒なところでもある(笑)。自由なようでいて、すべてのチャンネルに立ち上げようと思ったらDSPリソースが足りなかったりとか。System 5は、そういう煩わしさから解放されているのがいいですね。それにしても2000年の段階で、これだけパワフルなコンソールが出来上がっていたということが驚きですよ。PS エンコーダーは旧タイプの“FAT KNOB”ですね。
松島 今は細いタイプが標準みたいなんですが、ウチは1号機が“FAT KNOB”だったので、すべてこのタイプで統一しています(註:現在、“FAT KNOB”仕様のオーダーは受け付けておりません)。“FAT Knob”は操作性ももちろんですが、視認性が優れているのがいいですよね。日本人は背が低いですし(笑)。背が低いといえばSystem 5は奥行きが短いのもいい。SL 4000と比べたら20cmは短いと思います。
――― 肝心のサウンドに関しては?
久連石 これまで使用していたSL 8000とは比べものにならないくらいヌケが良くなってますよね。先日初めてこの部屋で1本作業したんですけど、仕上がりをイマジカさんで聴いたらいつもと全然違った。クリアで解像度の高いサウンドでした。
松島 それとSystem 5の大きな特徴は、モニター系がすべてアナログ回路でできている点です。DAコンバート後の音声をアナログ・アッテネーターを使ってデジタルで制御しているんです。最近のデジタル・コンソールの中には、モニター系もデジタルのものがありますが、それだとある程度音量を上げないとDAコンバーターの性能が発揮できないじゃないですか。しかしSystem 5なら、いくら音を絞っても音が悪くならないんです。このアナログ・アッテネーターをデジタル制御するという設計はCSシリーズ以来の伝統なんでしょうけど、本当に素晴らしいですね。それにモニター系がアナログだと、Dolbyのプロセッサーを組み込みやすいというメリットもあります。古いタイプのプロセッサーは、アナログ入出力しか装備してなかったりしますからね。だからここでは、DAコンバート後の音声はすべてアナログ処理になっています。
――― しかしSystem 5は、2000年にリリースされたコンソールです。10年以上前のコンソールを今導入することに躊躇はありませんでしたか?
松島 まったく(笑)。やっぱり使い慣れたコンソールがいちばんですよ。
久連石 これがレコーディング・スタジオだと、部屋ごとに色を付けるためにコンソールを変えるというのもアリだとは思うんですけど。ジャンルによって合うコンソールは違ってきますし、エンジニアさんによってEQの好みも違いますから。しかしウチのようなスタジオは、コンソールは統一した方がメリットは大きいと思います。
松島 それにプロセッサーやコンピューター、それにソフトウェアはどんどん進化していると思うんですが、サーフェースに関してはこれ以上のものを作るのは難しいと思うんですよね。本当に完成度が高い。ヘタに変えても操作性が悪くなるだけだと思いますし、だからこそこれだけの長い期間モデル・チェンジしないんじゃないですかね。少し褒め過ぎですけど(笑)、本当に良く出来たコンソールですよ。
――― Studio 4のSystem 5はHybrid仕様ですか?
(註:System 5 Hybridとは、標準のDSPコアと、DAWのミックス・エンジンを並列に使える仕様のこと。Hybrid仕様のSystem 5なら、たとえばチャンネル・ストリップの1~16chは標準のDSPコアで動作させ、17~32chはPro Tools|HDシステムのDSPで動作させるという複数のミックス・エンジンを併用した作業が可能になります。現行のSystem 5はHybrid仕様が標準になります)
久連石 そうです。ですからPro Tools softwareがVer.9でEuConに対応したので、時間があればHybridでも一度作業を行ってみたいんですよ。この機能を使えば、ICONのようにPro Tools|HDシステムのミックス・エンジンだけで作業することもできるわけですから。System 5標準のDSPコアとどの程度違うのか、とても興味がありますね。ただ、スケジュールに余裕がある作品じゃないと試せないですけど(笑)。
● System 5とPro Tools|HDシステムは、最新のHD MADIで接続
――― DAW周りについておしえてください。
久連石 Studio 4ではPro Tools|HDシステムが4式稼働していて、台詞メイン用、音楽用、効果用、そして録り用という使い分けですね。System 5との接続は192 I/OからAES/EBUで行っていて、新たに導入した録り用のPro Tools|HDシステムだけ、HD MADIを使用してMADIで接続しています。Pro Tools|HDシステムのMADIインターフェースに関しては、以前はSydecの互換品を使っていたんですが、HDカードに直接繋がるのはいいんですけど、ケーブルを長く延ばすことができなかったんですよ。そんなこともあってAVID純正のものが出るのを待ち望んでいたんですが、HD MADIはケーブルの長さも含めてまったく問題ないですね。ちなみにPro Tools softwareは、Ver.7からVer.9までコンピューターによってバラバラです(笑)。近い将来、Ver.9で統一したいんですけど。
松島 他の部屋のDAWもPro Tools|HDシステムで、Studio 3には3式、Studio 2には2式、その他のスタジオには1式づつ入っています。システム構成は、すべてPro Tools|HD 3 Accelですね。CMやテレビ番組のMAを行うStudio 7とStudio 8では、Fairlight Dreamシステムをメインで使用しています。
――― プラグインに関しては?
久連石 WavesはPlatinum Bundleで、代表的なものはほとんど入れてあります。アウトボードは録り用に使うUrei 1176LNがすべての部屋にあるくらいで、あまり使わなくなってますね。チャンネルEQ/ダイナミクスは、System 5標準のものがメインです。プラグインは、一時期はWaves SSL 4000 Collectionにハマっていたんですが、ずっと愛用しているのはWaves Renaissance Compressorですね。トータル・コンプとして使っているんですが、深くかけても音が変化しないのがいいんですよ。あのかかり方は好きですね。
藤林 トータル・コンプレッサーとしてはWaves C4もよく使います。C4はRenaissance Compressorとは逆で、かけたぶんだけガッツリかかる。パラメーターが多くて難しいプラグインなんですけど、基本的にはプリセットを選んで、そこからエディットするという使い方ですね。トータル・コンプの割合としては、C4とRenaissance Compressorが半々という感じです。
――― リバーブは?
久連石 僕はReVibeがメインで、たまにTC Electronic System 6000を使用することもあります。ReVibeはプリセットが豊富な点が気に入っていますね。シーンに合った響きが簡単に見つかります。
――― 本日はお忙しいなか、ありがとうございました。
向かって左から、スタジオ技術部 録音グループ所属のサウンド・ミキサー、藤林繁氏、取締役 スタジオ技術部長の松島洋之氏、スタジオ技術部 録音グループのチーフ・サウンドミキサー、久連石由文氏
アオイスタジオ株式会社
http://www.aoistudio.co.jp/
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