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2014年8月 8日 (金)

[S3L System] Massive Attackツアーに同行: ショーは続く

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以下の記事は、ロブ・アラン氏によるシリーズ記事On Tour with Massive Attack」(英語)の一部です。ロブは、ツアーFOHエンジニアおよびAvidライブ・サウンド・チーム・メンバーの両方の立場から自身の見解を述べています。

 

ソフィア

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大好きなバンド、マッシヴ・アタックのツアーに同行し、これまたお気に入りの卓、Avid S3Lでミキシングを行い、楽しい時間を過ごしています。僕たちは、やや断続的なプロダクション・リハーサルのスケジュールを終えたところで、ツアー初日を迎える準備を整えたばかり。その舞台となるのは、ブルガリア・ソフィアだ。

 

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ショーの会場であるアイスホッケー・アリーナの音響は、巨大なクッキー缶を逆さにして、コンクリートに埋め込んだのとだいたい同じような感じ。ただ、いつものことだけど、ロックンロールではこれはまったく関係ない。パフォーマンスとパワーが重要だからね。最高のショーでは、バンド、クルー、オーディエンスが少しの間一体となり、「我を忘れて音楽に浸る」という、たったひとつの目的を持ったコミュニティが生まれるんだ。

 

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今回のマッシヴのショーは僕にとって8年ぶり。少し緊張してる。「Battlebox」でショーが幕を開けると、首筋に鳥肌が立つ。2万人の観衆が歓喜の声を上げる。スターリン時代に建てられたアリーナいっぱいのオーディエンスの叫び声の響きで、一瞬バンドが聞こえなくなる。すべてを最大まで上げたい衝動に駆られるけど、なんとか我慢。ここでフルパワーにしてしまうと、このあと調整がきかなくなるからね。「Angel」でボリュームをピークにして、「Unfinished Symphony」に次のピークを持ってきて、その後アンコールの終わりまで最高潮を維持させるプランだ。「Angel」が僕にとっていつもセットの目玉だから、それまで抑えておく必要がある。オーディエンスの歓声が長い間このレベルを維持することはないと思うけど、ステージが進むにつれ、オーディエンスのパワーと熱意に驚かされる。

最初の数小節の間に、キットをすばやく確認する。タイムコードは進んでいるか?スナップショットはトリガーされているか?Pro ToolsセッションがCat5eの64チャンネルで録音されているか?2トラックの参照ミックスを48kの24-bitでUSBキーに録音し、スナップショットがソング・タイトルを自動編集して各.wavファイルに自動入力するようにもしているから、それも確認する。すべて問題なく動作しているようだ。友人のラドゥがルーマニアからやってきて、Sensorのボーカリストを連れてFOHにやって来た。目が合うと、彼は笑って親指を上げるしぐさをした。

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マルティーナが歌い始めたら、LRバスのEQを確認する。S3Lにはグラフィック・イコライザーとパラメトリック・イコライザーが各出力に搭載されている。サウンドチェック中に、手に負えない音響環境をなんとかするために、GEQでいつもよりも多めに特定の周波数をカットしておいた。この音響環境に2万人のブルガリア人の歓声が与える変化を判断しつつ、カットしておいた周波数の一部をゆっくりと戻していく。こうすることで、いくらかのダンプ効果を得られることはもちろん、オーディエンスの声とダンスの熱と蒸気を大きく上昇させることができる。「電話周波数」と僕が命名している、声が強調されて単語が明瞭になる600~3kの帯域の一部を取り除く。また、100~200Hzのベースギター周波数の一部も戻す。室内が空っぽのときは重低音が効き過ぎの印象だったけど、ここでもう少しパワーを加えてもいいだろう。今のところ、GEQはほとんどフラット。これでいい。今朝ベニー(プロダクション・マネージャー)に、僕のチャンネルのほとんどがフラットで、システムEQはフラットなのが理想的だという話をしたんだけど、そしたら彼が、僕があまり仕事してないようだから減給した方がいいって!笑っちゃうよね。だからこう説明したんだ。ソース・サウンドはグレート、マイクは良好で配置も問題なし、S3Lプリアンプは最高。自分の耳と機材が信用できるものなら、手を加えないことが賢明な選択という場合もあるってね。

ローディーのルール: 正当な理由がないかぎり、信号経路には手を加えないこと。大音量にしたいなら、レベルを下げない!

ショーも落ち着き、僕も、音楽とそれに対するオーディエンスの反応を楽しむことができた。ショーの進行に合わせて、各ソングのスナップショットに細かい調整を加えては保存していく。こうしておくことで、ツアー開始後のいくつかのショーやサウンドチェックの間に、プロダクション・リハーサルで行った作業を洗練させ、より深めることができる。「Angel」の番がやって来た。スタジオワン黄金時代の最後のレゲエ・シンガー、ホレス・アンディが、誰にも真似のできないすばらしいパフォーマンスを見せてくれた。彼は本当に変わらない。歌声の音節ひとつひとつに喜びがあふれ出ている。「Love ya, love ya, love ya」のフレーズにミックスの左から右にパンするディレイをかける。そのあとはドラムとギターの登場だ。PAはフラット、オーディエンスが自然と歓声を上げる。自分の仕事が最高だと思うのはこんな瞬間だ。

 

ビジュアル

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それぞれのショーで、バンドは地元のジャーナリストや翻訳者に協力してもらい、心を打つ入念なビデオを投影した画面の上に過激なメッセージを表示させる。「Future Proof」のときに表示されたメッセージがどういう意味だったのか分からないけど(僕のブルガリア語はさびついてるからね)、オーディエンスの反応はすさまじく、アリーナの天井が吹き飛ぶかと思うほどだった。この仕掛けは今も進行中で、特に地元の文化、政治情勢、環境に関連して、各会場と国に合わせて変わる。マッシヴ・アタックのショーですばらしいのは、彼らがいつもバックライトを使用していて、ほとんど暗闇の中にいることだ。要は、音楽とビジュアル・コンセプトがすべてなんだ。最高のバンドを伴った巨大なアート・インスタレーションって感じ。エゴむき出しのスタンスが一切ない。正面から光が当たるのは、最後のアンコールが終わって、9名全員がオーディエンスに手を振り、ハグし合うときだけだ。

イスタンブール

次はイスタンブール。市中心部の公園が会場だ。PAは、非常にうまくセットアップと配置がなされた宙づりのK1。ショー当日、僕は早めに現場に行って、卓とPro Toolsリグをセットアップしてバーチャル・サウンドチェックを行った。すべての出力処理をフラットにして、再生ボタンを押し、スナップショットを呼び出す。Pro Toolsがソフィアでのコンサートのショー・ファイルでの位置にジャンプしてくれる―ほとんど僕が望むサウンドになっている。プロセッサーのサブに少しレベルを加えて、いくつかの曲を処理したら、ほぼ完了。野外なので反響が少ないから、少しリバーブを加えないと。お気に入りのSonnoxリバーブを使用するいい機会だ。初期反射と残響の間でフェードさせることのできる機能が気に入っている。面白い可能性を広げてくれるからね。数年前、The Black Bombersの典型的なロックンロール作品をミックスしたんだけど、そのとき、レトロな音の楽器の効果を出すのにこのプラグインを使用した。ほかにも、セットの一部のドラム・グループの波形のシェイピングにSonnox Transmodを、両方のドラムキットのパラレルコンプレッションにSonnox Dynamicを使用した。

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その後、最高にクールな出来事が起こったんだ。トルコ人ラップ・アーティストCezaのミックスを行っている有名なアッカヤ兄弟のイシュマエル・アッカヤが、彼のS3Lを手にFOHに現れ、S3Lでバンドのモニターのミキシングを行ったんだ。言葉は通じないけれど、すばらしい合同セッションだったよ。プラグインを比較して、互いに親指を立てて笑顔を交わした。彼のショーのサウンドはすばらしかったし、うれしかったね。明瞭で低域に十分な広がりがあって、それでいてラッパーの声の明度はすばらしい。ときどきものすごい早口のトルコ語でまくし立てていて、意味は分からなかったけど、面白かったよ。

ショー・ファイルのポータビリティは窮地を救う

オーディオの問題は誰にも起こって欲しくない。他人の不幸を見て喜ぶようなことは好みじゃないけど、あの日、別のメーカーのコンソールを使用してた別のバンドに起こったある事件は、ショー・ファイルのポータビリティの重要性を実感させてくれる出来事だった。Avidの卓では、どんなバージョンのソフトウェアを使って、どんな卓からUSBキーに保存したショーでも、他のAvidの卓で問題なく立ち上げることができる。あのかわいそうなFOH担当は、ショーを一切ロードすることができなかったんだ。すべてね。同じメーカー、同じモデルだけど、バージョンが違ってたらしい。開演まで何時間も頑張ってたけど、結局あきらめた。バンドは、LRフィードをFOHのPAシステムに送るモニター卓からミックスすることになった。きついよね…。担当がたばこを立て続けに吸いながら悪態をつく間、僕も辛かったよ。

ついに僕たちのショーの番になったとき、このシステムで良かったと思ったね。昔のL-Acoustics V-DOSCシステムでは、ローエンドのパンチを得るのがなかなか難しかったけど、K1なら問題ない。マッシヴ・アタックの音楽にはローエンドが使用されていることが多いけど、ローエンドはパンチがあってはっきりしていなければならない。K1は、僕が正しいと思うサウンドに近づける手助けをしてくれる。「Future Proof」がスタートすると、スクリーンにトルコ語でフレーズやスローガンが表示され、オーディエンスが声を上げ、腕を振り上げ始めた。後で聞いた話では、市内の公園を封鎖の手から守るスローガンだったらしい(ショッピングモールはもう十分だよね)。この曲が終わっても、歓声はなかなか止まなかった。とてもパワフルだったよ―まるで、ここから革命が始まるかのようだった。

バルセロナ

次の目的地は僕の故郷バルセロナ、そしてすばらしいSonarフェスティバルだ。市内のさまざまな会場で昼夜開催されるこのフェスティバルは、世界最大規模のダンス/エレクトロニック・ミュージックの祭典だ。ここでもK1システムが使用されているけど、こちらはものすごい規模。Twin Cam Audioのスタッフがすばらしい仕事をしてくれたおかげで、本当にすばらしいサウンドのPAだった。僕の息子2人もショーにやって来て、楽しい時間を過ごしたよ。下の息子アジャーニが僕のショー・ミキシングを見るのはこれが始めてだった。僕がフルタイムでツアーに参加するのを止めたとき、彼はまだ4歳だったんだ。ショーの間、FOHで僕の隣に彼が座っているのはうれしかったね。妻ローデスは、友人たちとオーディエンスにもみくちゃにされながら踊ってたよ。マッシヴ・アタックは彼女のお気に入りのバンドでもあるんだ(僕たちって本当にお似合いのカップルだよね)。彼女によれば、マッシヴ・アタックの音楽はイド(本能的衝動の源泉)にダイレクトに語りかけるから、ダンスするしかなくなるらしい。上の息子イバイも、友達を連れて来場していた。彼らは一晩中会場にいたよ。フェスティバルは次の日の朝食の時間になって終了した。息子の友達たちは、バックステージ・パスをもらって大喜びしてた。スターに会えるからじゃないよ。バーでタダ飲みできるからさ!そのうちの一人は、肩を脱臼して救急車で運ばれたんだ。脱臼はダンスのせいで、決してバーで飲み過ぎたからじゃないって言い張ってたよ!

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コンサートは最高だった。マッシヴ・アタックのファンが3万人も来場したからね。スペインのオーディエンスはいつも最高だ。彼らは格好つけようとせず、とにかく楽しもうとするんだ。僕たちの出番は有名DJのすぐ後だったんだけど、彼のシステム・セットは衝撃だったね。とにかく大音量で、密閉型ヘッドフォンのレベルを11まで上げてライン・チェックがやっと聞こえるくらいだった。頭を切り換えてバンドがステージに立つまで3分くらいしかなかった。レーザーなどを駆使した最高のビジュアル。ショーは希望どおりのものになった。バンドのマネージャーは、ここ数年で最高のサウンドだったと言ってくれた。たぐいまれなS3L卓と、モンスターK1リグをほめてもらったんだと思ってるよ。

これ以上ハッピーなことはなかったよ―家族が来てくれて、あらゆるニュアンスと僕が加える繊細な変更を再現してくれるS3Lを使用して僕が思う世界最高のバンドのミキシングができたんだからね。ショー後はなかなか大変だった。別のDJがこれまた大音量で、脳みそが爆発するんじゃないかと思ったよ。サウンドは凶器そのものって感じだ。深夜スロットのキットがセットアップされる間に、僕たちはパッキング。僕たちのキットの一部は、レイキャビク行きのチャーター機737に向かう別のトラックに乗せる必要があった。これらすべてを、世界最大音量のディスコが繰り広げられている間に身振り手振りでオーガナイズしなければならなかった。大変だったけど、とにかくやり終えて、すべてをあの遠くて見知らぬ北の素敵な国に届けることができた。

アイスランド

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とにかく言えることは、機会があればアイスランドを訪れるべきだってこと。本当に美しいんだ。ものすごく幻想的な景色と、野性味あふれるドラマチックな自然でいっぱいだ。レイキャビク市内の小さなフェスティバルで演奏したんだけど、ここではMeyer Miloシステムが用意されていた。このシステムを扱うのは久しぶりだった。とても音楽的だけど、バルセロナのシステムのようなパワーと強烈な存在感はなかった。それでも楽しかったし、ショーもとても上手くいった。奇妙だったのは、空がまったく暗くならないこと。本当に、少しも暗くならないんだ。太陽は沈んだと思ったらまたすぐに姿を現す。

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僕たちのセットが終わったのは午前1時だったんだけど、午後1時のような明るさだったよ!S3Lは地元のクルーからかなりの注目を集めていた。こんなにコンパクトでパーフェクトな形状の筐体がパワフルなサウンドをもたらすことに皆驚いていたね。

 

休日

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 次の日、僕たちの運転手を努めるラブ(本名らしい!)が、彼の故郷であるアイスランドの名所を案内してくれた。巨大な滝、間欠泉、氷河、野生の馬などを見た後、丘の中腹に沸いている天然露天温泉に浸かって観光を終えた。最高だったよ。参考にいくつか写真を載せておこう。これまでにも何度か素敵な休日を過ごしたけど、その中でも最高の休日のひとつと言えるかもしれない。

今回の休日は、ツアー中に体験したいくつかのすばらしい出来事を思い返すきっかけになった。ブラジルで1日休みを取って、豪華な食事や飲み物が並ぶ華やかな特別なテラス席(ポップ・スターも何人か同席してた)からカーニバルを見学したこと。ゴージャスなコスチュームに身を包んだダンサーがサンバのビートに合わせて踊るのを一晩中眺めていたな。メキシコのテワカンで、太陽のピラミッドの頂上に太陽が昇るのを見たことも思い出した。

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一緒にツアーに回っていたバンドがシャーマンを雇って、一般公開時間の前に入る許可を特別にもらったんだ。夜中に現場に着いて巨大なピラミッドに上り、スピリチュアルで人生を変えるような体験をした。霊的な何かを感じることはなかったけど、シャーマンがお経を唱えながら儀式を行う間、皆笑いをこらえるのが大変だったことはよく覚えてる。とにかく、ピラミッドの頂上で、太陽が昇るのを眺めるのは楽しかった。

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マニック・ストリート・プリーチャーズとのツアーでの写真もいくつか紹介しておこう。最高にクレイジーなギグ(これについてはブログでまた詳しく話すつもりだ)の後、バンコクの市場で撮ったデプトフォード・アンディと僕の写真。市場の屋台で働いている女の子がくすくす笑いながら、僕たちをからかって「ファラン、ファラン、ビーチはあっちよ」って背後から声をかけてきたっけ。

もうひとつ印象的な休日の思い出は、ポルトガルでヨットをチャーターして、冷たいビールを飲みながらアルガーブまでクルーズしたことだ。そのときのメンバーは、「JDB」、「マッドドッグ」レイチ、「デプトフォード」アンディ、「ムーンボーイ」グリットン。このときのメンバーにはニックネームが多かった。僕のあだ名は「ラバー・ボタン」―理由は聞かないで!

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今週末は、グラストンベリーで泥まみれでどんちゃん騒ぎする6万人の観客を前にヘッドライナーを努める予定だ。楽しみだよ!

 

 

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オリジナルブログ著者: ロブ・アラン氏

ラ イブサウンド・エンジニアとして、コールドプレイ、マッシヴ・アタック、マニック・ストリート・プリーチャーズ、ナタリー・インブルーリア、リチャード・ アッシュクロフト、リサ・スタンスフィールドといったすばらしいアーティストと仕事する幸運に恵まれる。また、「デイヴィッド・レターマン」、「サタ デー・ナイト・ライヴ」、「ジェイ・レノ」、「ザ・ブリット・アワード」、「MTVミュージック・アワード」、2010ワールドカップ・キックオフ・コン サートなどのテレビ番組のミキシングも担当。

 

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