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2016年7月13日 (水)

S6Lと行くMassive Attackコンサート・ツアー

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こんにちは、ロブ・アランです。

前回の記事では、同僚のChris Lambrechtsと一緒に、Avid S6Lプロトタイプ2台を持ってヨーロッパを10,000km巡り、ありとあらゆる知り合いと初めて会った何人かの人々に、S6Lの感想を伺い、より良いものにするにはどうすれば良いかと、意見を聞いて回ったことについて書きました。

私の最初のツアー記事は、より小規模なシステムであるAvid S3Lでミキシングした2014 Massive Attack Worldツアー についてでしたが、この記事が初めての方でも、問題ありません。

読めばお分かりになると思いますが、このブログは、主に過去の裏話とライブサウンドのミキシングに関する私の考えを散りばめたものです。

私は関連する、2つの役割をこなしてきました。1つは、Avidのコンソール・デザインチームの一員としての仕事、もう1つは、様々なバンドのFOH(フロント)ミキシングの担当です。学校の先生から私の職業を聞かれた息子は、「バンドの音をもっと大きくする仕事」と答えたようです........確かにこれ以上の良い説明は、私には思いつきません。

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再びツアーへ

現在、私はMassive Attackのツアーに参加し、素晴らしいS6Lでミキシングしています。

前述のように、私の立場は偏ったものです。数年前、古い友人であるスーパースターのRobert Scovill、偉大なブレインのSheldon Radford、Al McKinnaと一緒に、ホワイトボードに囲まれてた部屋でサインペンを手に座りました。私たちは、非現実的、観念的な机上の空論に耽りました。昨年後半、そのブレインストームの成果が実を結び、アメリカとヨーロッパで数百人もの人がチームとして関わった大規模な取り組みが実現しました。

ライブサウンド業界に携わる人ならば、多少なりとも聞いたことがあるでしょう。S6Lを発表して以降、目まぐるしい日々の中で、私たちはとても忙しく展示会等を巡り、早くから興味を持っている人々にが計画通りに進んでいることを説明し、S6Lに対するコミュニティからの圧倒的な需要や興味に対応してきました。S6Lは、数々の賞を受賞し、あらゆる場所で称賛を浴びています。

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しかしながら、現在、私はAvidの仕事から休みをもらい、デスクを使ってMassive Attackのミキシングを担当しています。

ホワイトボードの走り書きから、完成された素晴らしい製品になるまで見てきた、このS6Lというツールを使って、大好きなバンドのミキシングを担当できることにとても興奮しています。

私たちが実施したあらゆる調査やテストは、デスクの驚異的なサウンドを予見させるものでした。しかし、バンドがステージに姿を現し、最初のボーカルラインがミックスにおさまり、観客の歓声が上がるまで、それは単なる紙の上の言葉と数字にすぎないのです。

前回のツアーでは、そのサイズと重量にも関わらず素晴らしいサウンドを実現するS3Lを使用しました。S3Lをあらゆる場所に持ち運んで、システムの物理的入出力を全て使い、最大限に活用することができました。Massive Attackのステージは簡単なものではなく、DSPチップのパワーも使い切りました。

今回のツアーでは、S6Lという驚異的な環境を楽しむことができました。S6Lの規格外とも言えるパワーのほんの一部を使っているにすぎません。80~90の入力チャンネルを使用していますが、S6Lには全部で196の入力チャンネル、96ミックスバスと24のマトリックスがあります。その中で私が使ったのは、ミックスバス×17とマトリックス×9だったと思います。

S6Lは、HDX DSP拡張カードを最大4枚利用することができ、最大200のプラグイン・スロットの処理に対応することが可能です。私は、2枚使用して、ショーでは50から60くらいのプラグインを稼働しています。

最初のHDXカードに、リバーブ、ディレイ、Eleven Rack等、様々なプラグインを稼働しても、まだまだ余裕があります。4枚のカードが必要になることは想像もできません。

プラグインが大好きな方、誰のことか分かりますよね?もしショーで、4枚のカードをフル稼働する証拠写真を見せてくれたら、賞品を進呈してもよいくらいです。冗談はさておき、96kで稼働するSonnoxプラグインの新バージョンはとても良く気に入っています。(これについては、後ほど。)

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新しいプリアンプ

今回は、ショーで新しい96Kプリアンプを使ってバンドを収録する最初の機会です。既に、古いS3Lのショーファイルを、何の問題もなくS6Lへ直接取り込みました。

まず最初に、S3Lでレコーディングした素材をアップサンプリングして、自宅のS6Lで“バーチャル・サウンドチェック”に使用しました。何もないところから始めた場合と比べて、少なくとも1日はプログラミングに費やす時間を節約できます。Universe機能がショーファイルを表示させてくれたおかげです!

S6Lのプリアンプによる録音クオリティの違いは、驚くべきものでした。3次元的な広がりを増したサウンドは、とてつもなくクリアで、あまりの嬉しさに、一日中、間抜けな笑みを浮かべてしまいました。

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本物のプロ

私たちは、プロダクション・リハーサルへと向かいました。そこは、素敵な空間で、持ち込んだ小さなPAでミキシングしました。

伝説のHorace Andyが私の元へやってきて写真を撮り始め、デスクを指さし、美しいジャマイカ訛りのレゲエ・レジェンドの声で言いました。「本物のプロだ。」

デスクの写真を撮る理由を聞くと、「これで、ジャマイカの人たちも、私が本物のプロと関わっていると分かる」と答えました。

後に、Studio One最後の名シンガーが、彼のデザインを気に入っていたと伝えた時、ハードウェア・デザイナーのMattaeusは、驚喜しました。制作リハーサルは、とても楽しい時間でした。

以前の記事で説明したLTCワークフローを使って、“バーチャル制作リハーサル”を行いました。基本的に、バンドは表に座って、プロダクション全体を視聴することができます。バーチャル・サウンドチェックの一部としてPro ToolsトラックにLTCを録音したので、映像部門がショーを実行するときのコードと同じコードをデスクから直接送ることができます。

S6Lでミックスしたバンドのサウンドを最初にPAから聞いた時の感覚は、説明しようのないものでした。わずか一年前には、S3Lによるサウンドにとても満足していたのです。しかし、今回のサウンドは、全くレベルの違うものでした。

エンジニアとしてとても嬉しく思い、デザイナーとしてとてつもなく誇りに思いました。まさに幸せそのものです。

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EQ、ダイナミクス、プラグイン

それでは、ショーでは何を変えたでしょう?まず、全てのEQをフラットにして、最初からやり直しました。

私は、シグナルフローから離れることを信念にしています。良い素材、適切な場所に適切なマイク、適したプリアンプとPAシステムに送り込むコンバーターがあれば、サウンドをいじることなく、完璧に近い物が得られるはずです。

もちろん、そこここに高域フィルターや低域フィルターは必要ですが、EQやダイナミクスを使わなくても、驚くような素晴らしいミックスを作成できます。

次に、チャンネルを個々に処理します。キックドラムのマイクには、低域をブーストして、中低域を若干カット、ハイシェルフを少し上げてハットやオーバーヘッドに加えますが、ほとんどのチャンネルはフラットなまま、かつてないほどフラットにします。とてもクリアで、反応も良かったので、他のデバイスやプラグインを使うことは考えもせずに、オンボードのゲートだけを使いました。

ドラムには、これも、超高速でトランスペアレントなチャンネル・コンプレッサーを使用しました。デスクのチャンネル処理機能に含まれる少しのゲート、コンプ、EQを使用したキックドラムにより、点音源スピーカーを通したアナログデスク以来感じたことが無かった感覚が戻り、胸がドックンドックンと音をたてました。本当に懐かしい感覚でした。どうせなら、あの頃の黒かった髪の毛も一緒に戻ってきたら良かったのに......残念です。

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次に、プラグインを幾つか加えました。何にでもマルチバンド・コンプレッサーを加えるのが流行りですが、私はそんなに好きではありません。それを使って、歌を台無しにしてしまっているような人もいます。

とはいえ今回は、私も2つのバス・チャンネル(プリ、ポスト・エフェクト)に新しいAvid Pro Multibandを使い、結果にはとても満足しました。

PAがサブとローの間で分かれる場所でクロスするようにバンドを分け、300Hz付近で再び、さらに800Hzでもう一度分けます。

Massive Attackのボトムラインはとても重要であり、強力でしかも制御されてなくてはなりません。Pro Multibandを挿入すれば、優しく制御して、システムへの負荷をかけすぎることなく、PAの別の部分へバスを送ることができます。

セットのあるポイントで、揺れるサブトーンを会場に届けるビンテージ・シンセも2つあります。高い比率でチャンネル・コンプを実行し、低音を維持します。アナログは、温かく、オリジナルかつリアルであると言われる一方で、同じサウンドは2度となく、惨事が起こるのを待つだけとも言われます。選択は自由です。

他にもたくさんのシンセやサンプルしたキーボードラインがあります。私は、Sonnox Oxford Dynamicsプラグインを使い、これらをミックスにきちんとすっきりおさめます。また、サウンドや楽曲によっては、「温かい」オプションを使ってアナログ感を加えることもあります。

全てのセッティングをスナップショットに保存して、楽曲毎または楽曲の部分毎に変更します。

リバーブには、デスクに付属するRevibeとSonnox Oxfordのリバーブを使用します。これらのプラグインの新バージョンでは細かな違いが気に入っています。Oxfordのリバーブは、終わりがとても自然にフェードアウトします。楽器や声を自然に、3D空間に配します。フェーダーでリバーブの初期反射音をバランス調整します。初期反射音だけが残るように、やってみましょう。これは素晴らしいツールです。

私は、マニックス(Manics)からコールドプレイ(Coldplay)、アルト・ジェイ(Alt J)までののあらゆるボーカルにRevibeを使用してきました。サウンドは、壮大さと詳細性を増しています。ご参考までに、Studio Aは私の最初のプリセットです。また、過去20年間、ずっと同じヘッドセットを使用しています。座右の銘は「壊れていないものは、直すな」です。

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ファーストショー

ダブリンのオリンピア劇場で、肩慣らしの公演を2回行いました。

同劇場でミキシングを経験したことがあるでしょうか?目の前にオーバーハングするバルコニーの下という、この劇場のミキシング・ポジションは、世界でも最悪です。仕入れたゴシップを早く伝えたくて、最大限の大声で話す数百もの喋り好きな人々に囲まれているようでした。

そんなわけで、UKでの本公演まで、バンド/ミキシング/デスクの機微を楽しむには至りませんでした。ツアーでは、良き友人のTony SzaboがデザインしたAd Lib Audio社の2Kシステムを使用し、日々の調整も彼が行いました。信頼する人間が、日々、会場の隅々まで響き渡る最高のサウンドを作り出せるシステムを用意してくれているという安心感は、この上ないものです。

おかげで、私は、バンドのミキシングに専心できます。デスクをセットアップしたら、Tonyがピンクノイズとレーザーで黒魔術を行っている間、私はそこから離れて、ケータリングをあさることができます。準備完了を知らされたら、Pro Toolsリグのバーチャル・サウンドチェック・モードで“Paradise Circus”を再生して、Tonyと相談します。若干の調整を加えることもありますが、通常は、ほとんど手を加えません。

MatrixからLRとサブを、そして会場の形状に応じて、インフィルとアウトフィルのミックスをTonyに送ります。Massive Attackのステージには、9人の異なるボーカルが使用するマイクを5か所に配置します。

PAやインフィルが、これらのマイクの後ろにないようにする、またはマイクに沿っていないようにしなければなりません。声量の少ない何人かのボーカルがいますが、大音量や難しい音楽では彼らの声量をあげるために、オープンにしておく必要があります。

会場によってはハングする地点があるということは、最初の計画よりもフロントラインを前に移動しなければならないことを意味します。ほとんどのショーは逆光なので、フロントラインの位置については、さほど問題ではありません。

問題なのは、頭上照明がボーカルの前にあって、ボーカルの顔が見えるかということです。デザインでは、全ての照明が後ろから照らされ、ショーの間、移動し変化する巨大なビデオウォールの前にはっきりとシルエットが浮かびあがります。時々、デスクから顔を上げると、目の前にはスペクタクルなビジュアルが広がります。

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ブリクストン・アカデミー(Brixton Academy)

ブリクストン・アカデミー(Brixton Academy)で仕事をしたことがありますか?私のお気に入りの1つです。

1920年代に映画館として建てられたブリクストン・アカデミーは、70年代にコンサート会場になりました。ステージは、ロミオとジュリエットのセットのように、イタリア式のプロセニアム・アーチで囲まれています。その理由については、誰も教えてくれません。

幾つかの伝説的なステージがここで行われました。ザ・クラッシュとピストルズがここで演奏し、マドンナ、ポリス、クラプトン、ダイアー・ストレイツに加えて、レゲエの有名アーティストたちもここで公演しています。

私は、10代の頃、ここでピーター・トッシュを見たことを覚えています。ここで一番好きな公演は、マニックス(The Manics)のミキシングを担当した公演です。他にも、ザ・ヴァインズ(The Vines)、フィンリイ・クェイ(Finlay Quaye)、ザ・スリルズ(The Thrills)等、数多くの素晴らしい公演も担当してきました。実は、妻の最初の妊娠を知ったのは、このステージの上でした。(その時の子どもは、今大学生です。)ここで、何人のアーティストのミキシングをしてきたかはっきり覚えていませんが、私には第2の故郷のようです。

スタンディングで5000人を収容するこの会場は、観客席が傾斜し、ステージの位置が高いので、どこからでもステージが良く見えます。音響が最適な会場ではありませんが、ロックはまさにロックします。

この会場では、ステージの前の偽の天井の上にキューポラが隠れています。初めて会場に来る人に見せるのがいつも楽しい仕掛けです。適切な位置に立てば、5、6秒続く素晴らしいフラッターエコーを聞くことができます。三重のエコーなので、手を叩くと、「ディドゥドゥ ディドゥドゥ ディドゥドゥ」と音を変えながら、繰り返されます。すごいです。この会場では3夜公演を行い、素晴らしい時間を過ごしました。

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UK国内最大の公演にはK1へアップグレードして、ロックンロールの亡霊を躍らせるには十分のサブバスを用意しました。

この会場でミキシングしたのは実に10年振りでしたが、技術の進歩を実感しました。巨大な音の壁ができるまで、ステージの横にS4ケーブルが山積みになっていた日々を覚えています。サウンドは最前席でかき消され、会場の半分ほどで勢いが失われました。

今では、S6LとTonyのモダンなライン・アレイにより、サウンドは私のところまで直接届きます。余りに近くに聞こえたので、ローカル・モニターがオフになっていることを確認したくらいです。

素晴らしいライン・アレイとS6Lの組み合わせは、リアルな3次元サウンドを生み出します。実に幅広く、正確なステレオと、深さもあるサウンドは、トップエンドが頭の上を飛び回り、サブは下っ腹に、そしてバスは胸に響くようです。

会場の後ろにスピーカーを配しているのかと聞かれたこともあります。一種の心理音響的なサラウンド・サウンドが生じています。ディレイを掛けるのがこんなに楽しく、ミキシングに我を忘れたのも初めてです。

私はミキシングが大好きです。自分の頭に響くサウンドが、観客に伝えたいサウンドであり、そしてそれがまさに観客の耳に届いているサウンドであるとこれほど確信できたことはこれまでありませんでした。

すごいのは、S6Lでは、それを簡単かつシンプルに実現できるということです。拷問のようなワークフローで悪戦苦闘することなく、オーディオ世界を純粋に探究しています。わが世の春を謳歌しています。

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この夏、ヨーロッパの様々な音楽フェスを巡るMassive Attackのツアーに参加します。

同じフェスに出演される方は、是非、声を掛けてください。もし、数分、お時間が許されるようであれば、喜んでお話しさせていただきます。または、S6Lシステム概要S6LのVENUEソフトウェアのインストールとアクティベーションの方法、システム・リストア・キーを作る方法等、Chris Lambrechtsと一緒に作成したビデオをご覧ください。

ElevenElevatorによるMassive Attackのコンサートツアーに関するビデオ・インタビューも、是非ご覧ください。

それではまた!


 

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オリジナルブログ著者: ロブ・アラン

ライブサウンド・エンジニアとして、コールドプレイ、マッシヴ・アタック、マニック・ストリート・プリーチャーズ、ナタリー・インブルーリア、リチャード・ アッシュクロフト、リサ・スタンスフィールドといったすばらしいアーティストと仕事する幸運に恵まれる。また、「デイヴィッド・レターマン」、「サタ デー・ナイト・ライヴ」、「ジェイ・レノ」、「ザ・ブリット・アワード」、「MTVミュージック・アワード」、2010ワールドカップ・キックオフ・コンサートなどのテレビ番組のミキシングも担当。

 

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