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2016年8月 5日 (金)

Media Composer事例:NHKメディアテクノロジー関西支社

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ノンリニア編集ソフトウェアAvid Media Composer Ver.8.5の導入を軸にNHKメディアテクノロジー関西支社(NHK-MT関西)のEDITルームが刷新された。4K・8K編集への布石であり、なおかつ現行の2K制作におけるテープ素材の扱いやリニア編集の要望にも応え、さらにHDの3D制作にも対応するなど、幅の広さに驚く。改修されたEDITルームは、これから4K制作を考えるローカル局にとって参考になる設備事例だ。そこで関西支社次長の坂下徳彦氏とテクニカル・マネージャーの馬場良治氏、改修を担当した池上通信機とアビッド テクノロジーの関係者に聞いた。(レポート・写真:吉井 勇・本誌編集長)

4Kをはじめ高解像度に対応する編集室へ

今回の改修について関西支社次長の坂下徳彦氏は、「今年から8K次世代放送の試験放送が始まることから、NHKの関連団体として4K・8Kの制作をサポートできるシステム構築を考えました。NHK関係では西日本で初の4K編集システムになります」と、4K・8Kコンテンツ制作の対応を挙げた。  

NHK-MT関西のEDITルーム改修は、これで3回目となる。テクニカル・マネージャーの馬場良治氏は次のように振り返る。「初回は2001年で、HDリニア編集を中心にしたシステム構成に、ノンリニア編集システム(NLE)をエフェクター制作と位置づけてAvid DSを導入し、Avid編集室とリニア編集室の両方から共用していました。2度目の改修は、Avid DSのバージョン変更に合わせた2009年で、大きく機材配置を変えました。それまでは機能中心でしたが、お客様優先の配置としてモニターしやすい並びに変更しました。当時、朝ドラの冒頭タイトルを視聴者投稿映像から毎回分、リニアとNLEのハイブリッド編集で作成するという新しい画面制作にも挑戦しました。番組冒頭のテーマソングに合わせ、視聴者の投稿してきたダンス映像をつないでいくものでしたが、最終回はマルチ画面で数十組を一度に合成しました。こうした経験を積み重ねてNLEへシフトしていきました。」  

改修をサポートしてきた池上通信機大阪支店主事の藤川雅朗氏は、「NHK-MT関西さんは独自のアイデアで、コスト面まで含めた検討が行き届いていたことに驚きました」と振り返る。馬場氏は「設備とオペレーターを一緒に考えるというスタンスで、他社のような分業体制ではなく、D5編集からリニア、NLEもすべてができる体制づくりの結果です」と説明してくれた。  

Photo_5坂下次長は「NHK-MTの4Kに対する取り組みはNHKグループの中でも早く、2011年にはNLEの4K編集室BLAZEを本社に整備。2012年には撮影監督の阪本善尚氏を招き、4K 制作におけるデジタル現像を深く知るため全社的に研究を進めました。同年、NHK エンタープライズに監督を依頼し、RAW撮影によるフィルムトーンやプログレッシブによる表現技術に取り組み “Megalopolis Tokyo”を制作。その後、新たに必要となったDITの役割を果たす人材も育てている」と、4K画質を担える実力を高めてきたと話す。  

MT関西支社が4K編集システム構築という狙いを持って進めたのが、今回の改修である。馬場氏は一つのコンセプトを貫いたと話す。「持ち込まれる素材はテープからディスクのファイル形式まで、編集はリニアとNLEの両方ができ、SDからHD、4Kまでのすべてに対応するハイブリッドという考えです。つまりリニア・ノンリニア、さらにHD3Dも融合したハイブリッドシステムということです。」

Diagram_3

システム構成の基本はハイブリッド

導入したシステム構成は〔図〕の通りで、Avid Media Composer Ver.8(MC)をHP Z840 Workstationに搭載した。そしてコンセプトである“ハイブリッド”を実現するためにビデオI/OインターフェースAvid Artist|DNxIOを採用し、SD・HD・2K・4Kのメディアをキャプチャー、再生ができるようにした。  

馬場氏は、「VTRも複数台装備しており、テープ素材のリニア編集もできます。MCにFusionとSapphire、Neonのテロップシステムをプラグインし、Adobe CCとDaVinciは単独でインストールしています」と説明する。例えば、カラーグレーディングはDaVinciで処理し、映像合成やモーショングラフィックスソフトのAfter EffectsはAdobe CCから使い、その素材共有はブリッジメディアではなくLANで連携している。そして、フィニッシングをMCで行うフローとなっている。  

このシステム概要の考えについてアビッド テクノロジー営業の光岡久治氏は、「Avidは自社システムにこだわらず、他社製品を搭載できるオープンなプラットフォームとして『Avid Everywhere』を提唱しています」と話し、NHK-MT関西のシステムビジョンが大きなトレンドに繋がるという。DNxIOで多くの素材を結び、MCにプラグインされた多様な編集ソフト、またネットワークで繋がる他の編集システムとの連携は、クラウドへ進化していくのだろう。NHK-MT関西の小さなEDITルームで考え抜かれた改修コンセプトと、Avidの提案ビジョンが結果として重なっていることに驚く。

4Kと2Kが混在する環境 MCはフォーマット変換で対応  

現在、求められていることは4K制作と現行の2K放送への対応だ。「少し前ですが、4K制作をして3日後に2K放送したいという相談を受けました。4Kと2Kの同時進行は大変困難が予想されましたが、今回のシステムでとてもスムーズに行うことができました。このことは今後の4Kと2Kの同時制作において非常に評価できることだと思います」(馬場氏)。  

この課題については、導入した最新バージョンのMedia Composerだからこそ迅速に対応できたと池上通信機FB推進部部長の宮崎誠久氏は説明する。「4K60pのフォーマットでプロジェクトを立ち上げ、HDのフォーマットのプロジェクトを用意すればシーケンスを読み込めるので、スムーズにダウンコンバートができます」。  

システム構築の際、60pへの対応でちょっとした問題があった。クライアント用モニターに民生用テレビ「REGZA」を採用し、接続ケーブルは4K対応HDMIを用意した。テストすると映像の再生が不安定。原因は10m近いケーブルの長さで、業務用のハイエンドHDMIケーブルに変えたところ問題は解消した。まさにSIerである池上通信機の豊富な経験とノウハウが生きた瞬間だった。  

今後のテーマは、高ダイナミックレンジHDRや広色域BT.2020の対応があるが、「8Kの対応も含め、確実に階段を上るようにしてシステム面を向上させていきます」と坂下次長。馬場氏は「大事なことはオペレーターの能力を高めることだと考えています。多様な編集ソフトが日々進化し競い合っています。それらの操作をマスターし、クライアント様に信頼していただける技量を持ったオペレーターが求められているのです」と、変化の激しい時代だからこそ、ポスプロとしての地力を強調した。

   

日本のNLEの歴史はAvidが上陸してから始まったと言える。Avidの設立は1987年で、来年に30年を迎える。リニアからNLEへ転換を支えてきたが、今後は次世代コンテンツ制作を『Avid Everywhere』というビジョンでさらにリードするという。

月刊ニューメディア誌 6月号掲載記事)

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